人生一度は退職をすることが珍しくない現代では、退職する理由は人によって様々です。
退職する際には「自己都合退職」と「会社都合退職」の2種類があり、状況によってどちらか一方で退職することになります。退職後には、取り扱われ方も異なるので注意しなければなりません。
本記事では自己都合退職と会社都合退職のメリット・デメリットを解説していきます。
「自己都合退職」について
「自己都合退職」とは

自己都合退職とは、転職や結婚、介護、家業の後継ぎなどの労働者側の都合により雇用契約を終了することを言います。基本的に自分から退職を希望する場合は「自己都合退職」として扱われます。
自己都合退職をした場合であっても、勤務終了日までの給与と退職金が支払われることになります。
ただ、自分から退職を希望した人は特定受給資格者に該当せず、直ぐに雇用保険が適用されません。
自己都合退職の主な理由
自己都合退職の主な理由として挙げられる例は以下のとおりです。
- 妊娠や出産、育児をするため
- 介護をするため
- 結婚して専業主婦(主夫)になるため
- 家業を継ぐため
- 転職や起業するため
- 大学や大学院へ進学するため
- 海外留学するため
- 資格試験や勉強に取り組むため
- 懲戒解雇を受けた
これらを含めた自己都合退職の理由は基本的には退職願(退職届)および履歴書に「一身上の都合」と記載します。
ただ業績悪化をした予感した転職理由は自己都合退職として扱われます。また懲戒解雇を受けた場合では就業規則のルール違反となるので、自己都合退職として扱われることになります。
「自己都合退職」のメリット・デメリット
「自己都合退職」には従業員側と会社側とでそれぞれメリット・デメリットがあります。
転職活動において会社都合退職に比べると退職理由をそれほど深く言及されることはないことです。
ただし、転職回数が多い場合や在職期間が短い場合は転職活動で不利になりますので要注意。
退職後に直ぐに失業給付金が支給されないことです。自己都合退職をした場合は、失業給付金支給を申請手続きしてから7日間の待機期間(待機期間中は失業保険が支給されません)が設けられ、経過後に2か月または3カ月の給付制限を受けます(給付制限経過後に支給を受けられるようになります)。しかも会社都合退職と比べると、給付額が少なく、給付期間が短くなっているのも特徴です。
また退職金は会社都合退職より自己都合退職の方が減額されて支払われることが多いです。会社に就業規則によって支給条件や退職金有無が異なりますのでよく確認してみましょう。
助成金の対象外となる会社都合退職ですが、自己都合退職の場合は支給対象になります。
助成金とは、厚生労働省が民間企業の事業支援のために支給しているお金のことです。助成金は一定の条件を満たさないといけないので、どの企業でも貰える訳ではありません。
その条件の一つとして「6ヶ月内に会社都合退職を行っていないこと」があり、会社都合退職にしてしまうと一定期間助成金を受給できなくなるのです。助成金の支給を受けている企業は会社都合退職とデメリットになりますが、助成金の支給を受けていない企業はに特にデメリットはないということになります。
そのため会社側に非があった場合でも退職時には自己都合退職を促すように誘導するような行為をしてくる場合がありますので要注意です。
従業員側とのトラブルになることが挙げられます。
従業員側としては会社都合退職の方がメリットが大きく、会社側としては自己都合退職の方がメリット大きいので、虚偽や誘導、隠ぺいなどの言った言わないであらゆる事柄でお互いの主張で争うことになります。
場合によっては労基にクレームや裁判になるケースもあります。
「会社都合退職」について
「会社都合退職」とは

会社都合退職とは、解雇や退職勧奨、倒産、事業整理などの会社側の都合により従業員との雇用契約を終了することを言います。基本的に会社から辞めるよう通告されると「会社都合退職」として扱われます。
会社側の都合によって従業員を解雇する場合、会社は従業員に対して離職日の30日以上前に解雇する旨を通告するか、30日分の給与額に相当する手当を支払う義務があります。もし、通告後30日以内に解雇する場合は残りの日数分の給与を支払うことになります。
また、従業員に対して解雇日の30日以上前に、解雇予告せずに解雇を行なう場合は解雇予告手当を会社は支払うことが義務付けられています。
会社都合退職の主な理由
会社都合退職の主な退職理由として挙げられる例は以下のとおりです。
- パワハラやセクハラ、いじめなどのハラスメント行為
- 慢性的な長時間残業
- 事業所の廃止や撤退
- 会社の倒産
- 給与の大幅減額の提示
- 給与支払いの遅延や未払い
- 会社から休職命令を受け3カ月以上経過しても命令が解除されない
- 業績悪化による早期退職制度の応募
- 業績悪化による退職勧奨
- 全体の3分の1以上の人員が一斉退職
- 能力不足・勤務態度の問題による退職
- 事業所の移転で通勤が困難になった
「会社都合退職」のメリット・デメリット
「会社都合退職」には従業員側と会社側とでそれぞれメリット・デメリットがあります。
会社都合退職した人は特定受給資格者とされ、通常は待期期間7日と3カ月を経過後でないと失業給付金を受け取れませんが、特定受給資格者なら待期期間7日間経過後に直ぐ失業給付金を受け取ることができます。
さらに会社から30日以上前に解雇予告がされていなかった場合は解雇予告手当として30日分以上の給与を受け取れます。
会社の給与未支払いや事業整理、倒産などの労働者に落ち度のない理由で退職した場合は問題ないですが、労働者の能力不足・勤務態度の問題が理由の退職は転職時の就職活動のおいて不利になります。
会社として退職して欲しい従業員と合意があれば円満な形で辞めてもらえます(従業員は会社都合退職の方がメリットが大きい)。この時に解雇予告手当の支払いもしないで済みます。
また、早期退職制度も会社都合退職の区分になり、これを利用して自ら退職してもらい、割増した退職金の支払い分もありますが人件費の削減として有効的な方法です。
会社側には様々なデメリットがあります。
トライアル雇用助成金やキャリアアップ助成金といった助成金の支給が、減額または一定期間認められなくなること。
解雇日の30日以内に従業員に通告しなければ、解雇予告手当の支払い義務があること。
従業員の合意をせずに解雇通告をすれば裁判や賠償金支払いのリスクが伴うこと。
不当解雇をした情報が広まると、社会的信用や企業ブランドを失う可能性があること。
そのため会社都合退職は会社側にとってデメリットが非常に大きく、なるべく従業員に自己都合退職してもらいたいと思っていますので、酷い会社だと自分達に否があってもそうなるように従業員に促して誘導したりすることがあります。
「自己都合退職」を「会社都合退職」にすることは可能か
結論言うと「自己都合退職」を「会社都合退職」にすることは可能です。
ただし条件があり、何でもかんでもとは限りません。
詳細は以下の記事からご覧下さい。
最後に
退職時には「自己都合退職」と「会社都合退職」の2つの退職理由があり、従業員側と会社側でそれぞれのメリット・デメリットを解説しました。
従業員は失業給付金、会社側は助成金が「自己都合退職」か「会社都合退職」によって大きく左右されることになります。そこからトラブルに発展することもあり得るので注意したい所です。
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